私は、日本と米国で放射線治療の臨床経験を積んだ後、米国とスイスで、当時最先端であったパイ中間子線治療に従事しました。その後、筑波大学で陽子線治療に取り組み、1994年からは放射線医学総合研究所病院(現・QST病院)で、世界に先駆けて炭素イオン線による重粒子線治療の臨床応用に携わってきました。また、佐賀県や神奈川県の重粒子線治療センターの開設・運営にも関わり、長年にわたり多くのがん患者さんの治療に携わってきました。
当クリニックで相談を担当する医師も、重粒子線治療を中心に、長年がん治療に携わってきた経験を持っています。
これまでの経験を生かし、重粒子線治療だけにとらわれることなく、「その患者さんにとって、どの治療を選ぶことが最もよいのか」を一緒に考えることが、私たちの役割だと考えています。
重粒子線治療には、大きく二つの特徴があります。
一つは、がんに放射線を集中させ、周囲の正常な組織への影響をできるだけ少なくできることです。これは、炭素イオンが体内の一定の深さで大きなエネルギーを放出する「ブラッグピーク(Bragg peak)」という性質を利用しているからです。
もう一つは、治療に用いる炭素イオン線が高い生物効果を持つため、通常の放射線が効きにくいタイプのがんにも高い治療効果が期待できることです。
さらに、多くの疾患で治療回数を少なくできるため、治療期間が比較的短く、患者さんの身体的・社会的な負担を軽減できることも大きな利点です。
こうした特徴から、手術が難しいがんや、従来の放射線では治療が難しかったがんにも治療の可能性が広がりました。現在では、骨・軟部腫瘍、頭頸部がん、前立腺がん、
肝がん、肝内胆管がん、膵がん、早期肺がん、大腸がん術後の局所再発、一部の子宮頸がんなど、さまざまながんが公的医療保険の対象となっています。
重粒子線治療が適していると判断した場合には、ご希望により、適切な治療施設をご紹介します。適応にならない場合にも、なぜ適さないのかをご説明し、「では、次にどのような治療が考えられるのか」を一緒に考えます。
重粒子線治療には優れた特徴がありますが、基本的には照射する部位を治療する「局所治療」ですので、すべてのがん、すべての患者さんに適しているわけではありません。
がんが局所に止まっていて、手術のほうが治癒の可能性が高い場合もあります。また、がんが他の臓器に転移しているステージ4では、抗がん剤、分子標的薬、免疫療法などの全身療法を優先すべき場合もあります。さらに、全身治療によって病状がよくコントロールされている場合などでは、重粒子線治療などの局所治療を適切に組み合わせることが望ましいこともあります。
だからこそ当クリニックでは、単に「重粒子線治療ができます」「できません」と判断するだけではなく、手術、薬物療法、通常の放射線治療、陽子線治療など、それぞれの利点と限界を比較しながら、その患者さんにとって何が最も適切な治療なのかを考えることを大切にしています。
大切なのは、現在のがんの広がり、これまでに受けた治療とその効果、年齢や体力、今後期待できる治療、そして何よりも患者さんご本人が何を望んでいるのかを総合して考えることです。
遠方にお住まいの方や、病状・体力などのため来院が難しい方には、オンラインによる相談にも対応しています。
診断画像や診療情報、これまでの治療経過などを事前にお送りいただければ、それらを確認した上で対応可能です。
「遠方なので、治療施設を受診する前に専門家の意見を聞きたい」といった場合にもご利用いただけます。必要に応じて、ご家族と一緒にオンライン相談に参加していただくことも可能です。
セカンドオピニオンは、現在の主治医の治療方針を否定するためのものではありません。別の立場から治療の選択肢を整理し、それぞれの利点と限界を十分に理解したうえで、患者さんご自身が納得して治療を選ぶためのものなのです。
当クリニックでは、医学的な根拠を大切にするとともに、患者さんご本人の意思を尊重し、ご家族の思いにも耳を傾けながら、納得できる治療法を一緒に探すことを心がけています。患者さんご本人だけでなく、ご家族からのご相談もお受けします。
どうぞ、一人で迷わずにご相談ください。