最近の医療技術の進歩は日進月歩です。特に、わが国で死因の第1位を占めるがんに対する治療水準は世界でもトップクラスといえます。がん治療には、手術、抗がん剤、および放射線治療の三本柱がありますが、なかでも放射線治療の進歩はめざましいものがあり、副作用の低減と共に適応疾患の拡大が得られるようになりました。
この「粒子線がん相談クリニック」は放射線治療の一つである粒子線治療についてのセカンドオピニオン外来です。粒子線とは、一般の方には耳慣れない名前かも知れませんが、現在、陽子線と重粒子線(炭素線)の二つが用いられており、わが国はその施設数と治療実績において世界の先頭を走っています。
粒子線のなかでも重粒子線治療は、質量12の炭素イオンを用いて治療しますので、がん病巣に対する線量集中性が最も優れており、従来の放射線に抵抗性を示すがんに対しても有効であることが確認されています。重粒子線治療は「切らずに治す治療法」の代表といえますが、治療回数・期間を大幅に短く出来るという利点もあります。このため、患者様の疾患によっては、勤務を続けながら治療を受けることも可能になりました。現在わが国では、QST病院(旧 放射線医学総合研究所病院)、群馬大学・重粒子線医学センター、神奈川県立がんセンター・重粒子線治療センター、大阪重粒子線センター、兵庫県立粒子線医療センター、及び佐賀県・九州国際重粒子線がん治療センターが稼働中で、さらに、2020年夏に山形大学医学部東日本重粒子センターが治療開始予定です。
こういった状況を反映して、最近、海外からも重粒子線治療を希望する患者様が急増しています。このクリニックは、国内のみならずそういった海外の患者様に対しても積極的に、わが国の重粒子線治療水準の高さを紹介していきたいと思っています。
がんの治療方法はひとつではありません。重粒子線治療も万能ではなく、必ず複数の選択肢があります。このクリニックは重粒子線治療を中心とした相談外来ですが、他の治療法も含めて個々の患者様にとって最も適切と思われる治療法をお勧めします。相談をお受けする医師は、主に稼働中の施設から、がんに対して幅広い知識を有した医師が交代で当たりますので、重粒子線治療の適応と判断されれば、迅速に治療を受けられることになります。どのようなことでも遠慮せず相談して下さい。
なお、当クリニックと同じく、一般財団法人 健康医学協会に所属する東都クリニック(当クリニックのビルの2階)に於いて各種画像診断(PET-CT, CT, MRIなど)や生化学検査を行うことができますので、セカンドオピニオンに必要な最新の診断情報をお持ちでない場合にもすぐに画像を撮ることができます。また、ご希望があれば、既に治療を受けた患者様の経過観察も保険診療で行います。これは、患者様の利便性を考えての取り組みです。
患者様のため、少しでもお役に立つことが出来れば幸いです。